古いピアノに高品質なものが多い理由

ピアノはヨーロッパはイタリアにおいて1700年頃に生まれました。
アップライトピアノはそれからおよそ100年後の1800年にアメリカで開発されます。そしてさらにその100年後となる1900年頃に、日本で初めてのピアノが産声を上げます。
ちなみに後のヤマハの創始者でもある山葉寅楠と、後のカワイの創始者でもある河合小市らによって製作されたピアノは、グランドピアノではなくアップライトピアノでした。

その後、世界は太平洋戦争に突入、日本のピアノメーカーも楽器どころではない時代を経て、戦後を迎え経済の復興と共に本格的な生産体制となっていきます。

80年代にピークを迎える日本のピアノ産業

そして日本のピアノ生産台数は80年代にピークを迎えます。
日本のピアノの木材加工の精度の高さや、大手メーカーでの大量生産は、ヨーロッパやアメリカのメーカーでは類を見ないもので、高度成長期である日本国内での販売に加え、あまり知られていませんが海外へ輸出されるピアノもかなりの量を占めていました。

ピアノ産業だけではなく、この頃の日本は輸出による黒字から経済は好調。
対してアメリカは経常収支と財政収支ともに赤字の双子の赤字。この赤字への対策として為替レートをドル安へと促すべく1985年に行われたのが、先進五カ国による協調。いわゆる「プラザ合意」です。

国内での最も大きな輸出産業として、自動車産業は非常に大きな影響を受けましたが、それ以上にピアノ業界への打撃は非常に深刻なものでした。 ちょうど同時期に国内でのピアノ需要が頭打ちとなったことも重なり、当時40ほどもあったピアノメーカーが相次いで倒産を余儀なくされることになるのです。

コストダウンのために楽器としてのクオリティが低下?

ヤマハ、カワイなど大手メーカーでもこの打撃は大きく、材料としていた良質な木材をはじめとしたコスト削減を迫られます。ヤマハはピアノ以外にも多くの分野を持っているものの、それでも例外ではありませんでした。

つまり、この時期を境にそれまでよりも楽器としてのクオリティが低下したといったら言い過ぎでしょうか?もちろん高価なモデルではコストを気にせずに製作されたピアノも存在しますが、もともと高価なピアノですから、一般家庭などで購入されるのは廉価モデル。設置スペースを考えればアップライトピアノが主流です。こういった比較的低価格なアップライトピアノでは、その傾向も大きかったといわざるを得ないでしょう。

このような理由から、日本製のピアノでは1980年代中盤~後半までに生産されたもののほうが、それ以降のものよりも楽器として高品質である可能性が高いといえるのです。

ピアノの音質を左右する響板

ピアノの音質を決定する大きな要因といわれる響板。
ヨーロッパをはじめとする老舗ピアノメーカーのピアノの響板には、スプルースをはじめとしたエゾマツの単板(一枚板)が使われることが多く、日本のピアノでも古いものではスプルースや松の単板が使われていました。

何枚かの板を張り合わせた合板は、単板よりも安価で耐久性という点では優れています。80年代後半以降の比較的安価なアップライトピアノでは、響板に合板を使用しているピアノが多く見られるようになりました。

木材そのものの音響特性が、そのままピアノの音質を左右するか否かは、さまざまな解釈がありますが、合板は少なくとも伝統的な響板の材料とは言えないでしょう。

楽器として高品質でも他の箇所の劣化は避けられない

このように、日本のピアノの歴史を見てみると、特に安価な価格帯のアップライトピアノにおいて、近年のものよりも比較的古いピアノのほうが、楽器として高品質であるケースが多いといえます。

しかしピアノ買取においては、古くなればなるほどその査定額は低くなります。 これは経年劣化によって、鍵盤周りのパーツや弦などに交換や調整などの必要性が生じてくることが原因。
現状でのそのボーダーラインがおよそ40年前のピアノということになるのです。